ロードバイクを人間に見立てると、外見と骨格の部分が「フレーム」で、内臓や筋肉の部分が「コンポ」となる。この例えは的を得てるだろうか?あまり自信ありません。
さて、前者の「フレーム」の中には、本体フレームに加えて、ホイール、タイヤ、ハンドル、フォーク、サドルも加えたものだと思ってほしい。そして、それらフレームを構成するパーツ以外のパーツがコンポーネント、いわゆる「コンポ」である。フレームとコンポは、切り離して考えられないロードバイクの重要なパーツである。
さて、コンポをもう少し分解すると、「変速機(ディレイラー)、変速レバー、ブレーキ、BB(ボトムブラケット)、ギア(スプロケ)」などをまとめた呼称である。
ロードバイクのエンジンはペダルを漕ぐ自分だが、それを動力に変えるパーツが「コンポ」である。
コンポーネントのグレードの違いは簡単に言えば「効率」である。上位グレードのコンポほど、ペダルに伝えた力をロスなく動力に変えて、自転車・ロードバイクを前へ速く、力強く進めてくれるわけだ。
もちろん、その性能の良さに正比例して、上位グレードほど値段がお高い。なんだったら、ロードバイクのフレームセットより、コンポの単体が高いこともある。
105の完成車か、あと8万円出してアルテグラにするか?
フレームは、見た目の好みや色、好きなブランドなどで初心者でも比較的選びやすいだろう。愛車にするならあの青のモデルがいい!2万までだそう。そんな決め方はできなくはない。
一方で、コンポはそう簡単には選べない。
コンポのグレードによる違いはどれほどなのか想像するのが難しい。105も、アルテグラも、デュラエースも、前輪2枚x後輪11枚で同じ22段変速である。しかし、1つグレードが変わると数万円も高くなる。それほどのお金をかけて上位グレードのコンポを買うほどの価値があるのか、初心者では検討が難しいだろう。
今回は、そんな難易度の高い「コンポ」の選び方について、スペック的なデータからのアプローチに加えて、ショップやサイクルモードで実際に乗り比べをして感じた体感的な違いを元に、コンポのグレード別の比較と選び方について解説をしていこうと思う。
コンポの2大流派「シマノ」と「カンパニョーロ」
そんなロードバイクのコンポの世界には、2大流派がある。
曰く「シマノ」と「カンパニョーロ」である。
左・シマノ 右・カンパニョーロ
世界の潮流としては、「シマノ」が優勢である。
強いこだわりがない限りシマノを選ぶ人が多いだろう。もちろん、カンパニョーロも性能は優れているがややお高い。シマノの方が安く、日本メーカーならではの安心の品質も想起され、なかなかカンパニョーロを検討する機会も少ない。差別化のために欲しいと思うけど高い。。。だったらフレームのグレードを上げたくなる。
※他にもスラムなどのコンポもあるが難しくなるので、ひとまずこの2つのメーカーが主流と考えて惜しい。
というわけで、この記事では、シマノのロードバイク用のコンポを比較検証する。
シマノコンポのグレード
まずは、コンポの違いを知る前に、ロードバイク用のシマノのコンポーネントのグレードの種類について整理していく。
シマノの最新コンポーネントを網羅した2017電子版カタログ「シマノバイクギアカタログ」が公開されている。詳しく知りたい方はこちらも参照してほしい。
>PC版
>スマホ版
シマノコンポのグレードと後輪ギアの枚数
シマノのロードバイク用コンポのグレードとしては、以下の6つのシリーズがあると考えていただければいいだろう。上位グレードから順に並んでいる。
基本的に前輪のギア数は2枚なので、後輪ギアの枚数を「11速」などと記載している。
- DURA-ACE(デュラエース)11速 9100シリーズ
- ULTEGRA(アルテグラ)11速 6800シリーズ
- 105(イチマルゴー)11速 5800シリーズ
- TIAGRA(ティアグラ)10速 4700シリーズ
- SORA(ソラ)9速 3000シリーズ
- CLARIS(クラリス)8速 2400シリーズ
ギアの枚数が違うと、何が良い?
上位グレードほどギアの枚数が多いことがわかると思うが、その効果は何なのかについて簡単に説明する。
ギアの枚数が多いほど、変速がきめ細やかにできるということだ。
そして、そのきめ細やかな変速による効果はなんぞやと思うだろう。
登りや下りなどの路面の変化に合わせて、自分の脚力でぴったりのギア比に変速しやすく、ペダルにかける力を最適化できる。すると、無駄な足の力をできるだけ使わなくて済む。
車でもずっとローギアに入れて走ると無駄が大きくガソリンを食ってしまう。同じように人間の足の力(体力)も1日で有限である。その有限な力をできるだけ効率よく使うためには、道路に合わせて、足の力にあったギアに変速し続けることがロードバイクのテクニックとして重要なのだ。
また、平坦な道でも、スピードが乗っている状態では、慣性の力を有効活用するために少しずつ重いギアに変えていきながら、トップスピードを上げていくといったこともギアの枚数が多いほど調整がしやすくなる。ギアの枚数にはそんなメリットがある。
この重要な後輪ギアの枚数を考慮すると、ロードバイクを本格的にスポーツとして楽しみたい人には、11速ある105以上のグレードのコンポをまずおすすめしたい。
(余談)
だったら、「もっとギアを多くすればいいじゃん?!」という意見も出てくるかもしれない。例えばMTB(マウンテンバイク)なら、前ギアが3枚でより調整ができる。
しかし、ギアの枚数が多くなるほど、車体が重くなってしまう。重さはロードバイクにとって致命的である。より速く、より遠くまで移動するスポーツでは軽さも同時に追求しなければいけない。そこで、ロードバイクでは前2x後ろ11のギア比が、今のところ最適となっている。
ヒルクライムレースなど上りしかないレースの優勝者などは、前ギアを1枚にしたヒルクライム専用バイクにカスタマイズしているほど、ギア1枚の重さも削りたいのがロードバイクの世界でもある。
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デュラエース、アルテグラ、105のスペックの違い
それではロードバイクを本格的に始めたい人に向けて、105以上のグレード3種類について、そのスペックと価格を整理していこう。
DURA-ACE(デュラエース)
DURA-ACE(デュラエース)11速(wiggle)
重量:2,231g ※スプロケなど重さが異なるパーツは重いものを選んだ合計重量
定価:209,925円(税抜)
コンポだけで20万円超え。下手なフレームセットより高いのだ。
重量は、最上位モデルのデュラエースで最大2,231g。後述のアルテグラ、105と比較しても最大で500g以内でおさまる程度の重量差しかない。大きいパーツではないのでそれほど重量差がでにくい部分であるからだ。
それでもスプロケを比較してみると、強度を落とさないレベルで細かく肉抜きの穴が開けられていて軽量化に対する強いこだわりが見える。
左がデュラエース、右は105である。穴の数の多さがデュラエースの軽量化に一躍かっている。
デュラエースは、グループセットでおおよそ17万前後が日本での実売価格である。ショップだともう少し高いが、工賃込みになったりするかもしれない。
amazonはペダル付きの導入セットできっちりの定価。
海外通販サイトのwiggle価格:¥165,010 – ¥252,725
海外ブランドの商品などは、wiggleを使うとかなり安くなるのだが、シマノは逆輸入になるので、セール価格でないと高いので、今のところデュラエースを買うなら日本で普通に買えばよさそうである。
ULTEGRA(アルテグラ)
ULTEGRA(アルテグラ)11速(wiggle)
重量:2,396g
定価:本体96,260円(税抜)
160gほど重くなったアルテグラ。いいフレームに乗る、レース出場を目指すならこのグレードぐらいは目指したいところ。
日本の実売価格は8万円前後。
wiggle価格:¥65,999 – ¥79,900(最大55%OFF)
ギア比によっては、wiggleで安く購入できそうであるが、微妙な差なので素直に日本で購入して良いだろう。
105(イチマルゴー)
105(イチマルゴー)11速(wiggle)
重量: 2,637g
定価:63,644円(税抜)
デュラエースに比べると400gと明らかに重くなっている105。アルテグラと比べると3万円しか差がない。パーツで買うならアルテグラを買った方がいいだろう。105はあくまで完成車のエントリーとして選択するコンポーネントかもしれない。
日本の実売価格だと5万円くらい。
wiggle価格:¥43,941 – ¥49,540 (最大46%OFF)
(おまけ)TIAGRA(ティアグラ)
TIAGRA(ティアグラ)10速(wiggle)
wiggle価格:¥37,510 – ¥41,092(最大47%OFF)
ティアグラは前述の通り、10速である。もちろんこれでもロードバイクは乗れるし、結構速い。10万円くらいのエントリーロードにはティアグラも多い。
しかし、あとあとアップグレードを考える可能性があるなら最初から105を選んでおいた方がコストパフォーマンスはいいだろう。
105をパーツで購入すると5万円もかかるからだ。
上位グレードの性能差は、スペックでは見えない「耐久性」と「ブレーキの制動力」
スペックからは、それほど差が見えなかったコンポのグレードの差だが、実は他にもスペックからは見えない性能差がある。
まず、「耐久性(寿命)」
試乗してもわからない性能差である。ロードバイクはその気になれば年間1万キロとかなりの距離を乗ることもできる。タイヤが消耗品であるようにコンポも消耗品である。上位グレードほど、パーツの素材などが良いため寿命が長くなるのだ。
- デュラエース 5年
- アルテグラ 3〜4年
- 105 2〜3年
が目安である。105は、デュラエースの半分から3分の1ほどの寿命となる。
もちろん乗る距離によって年数は変わるが、距離に翻訳しても寿命の差は同じくらい違う。。。
デュラエースを乗り潰す期間だと、105では2.5回交換しなければいけない。
105の5万円×2.5=12.5万円。デュラエースは17万円。
差額4.5万円だったら、性能のいいのに5年くらい乗った方がいいのではと思い始めるわけである。ただ、最初に17万円払うのって痛い。
だから、105で入って、2年後にデュラエースへ換装するのがロードバイクの楽しみ方として正解なのではなかろうか。
次に、「ブレーキの制動力」
上位グレードほど、スピードが出やすいため、そのスピードに合わせてブレーキ性能が高められている。
コンポは、パーツ別にグレードアップも可能なので、105の完成車購入して、ブレーキだけアルテグラにする、クランクをアルテグラにする、と少しずつグレードアップすることも可能だ。
そしてパーツごとにグレードアップするなら、一番最初のおすすめが「ブレーキ」である。安全面の性能から上げることで、自分の脚力が上がってよりスピードが出るようになった時に安心の制動力があるようにしておくのがロードバイク乗りとしての正しい進化である。
最後に、ペダルが装着されて、回るクランクの剛性も上位グレードほど、高いと言われている。これにより力のある人はグイグイペダルを回せるので、グイグイ進む。しかし、足の力が弱いと剛性が強すぎてすぐ疲れてしまう逆効果が出てくる。つまり、上位グレードに乗るにはそれなりの脚力がないと乗りこなせない!ということだ。
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乗り比べてわかった!コンポのグレードの違い
ロードバイクショップやサイクルモードなどのイベントで、積極的にロードバイクを試乗して、半日のうちに105、アルテグラ、デュラエースのすべてのグレードのコンポに乗る機会を得ることができた。短時間の間に乗り比べたので、それぞれの操作感や乗り心地が薄れないうちに、グレードごとの違いを割と的確に感じることができたのではないかと思う。もちろん主観ではあるのだが。
ちなみに、比較で乗ったロードバイクは全てTREK EMONDAなので、比較しやすかったことも付け加えておく。
また、私が普段乗っている愛車は、PINARELLO GAN S(2016) 105グレードである。
105は「カラクリ」、アルテグラは「メカニカル」、デュラエースは、「次世代」
まずは、普段乗っている105の乗り心地をベンチマークとして記述する。
105の変速感覚
フロントギアは、「よいしょっ」と変速する。変えるぞという意識が必要だ。レバーを操作してから、チェーンがぬるりと動き、ギアを変える。
リアギアも、同じくやや重く「ガチャリッ」と変速する。変わったぞという感覚だ。
イメージは昔ながらの「カラクリ」の変速機である。
アルテグラの変速感覚
次に、ULTEGRA(アルテグラ)に試乗した感想だが、105とは明らかに違った。
フロントギアは、「サクリ」と変速する。明らかにレバーを動かす幅が少ない。105は無駄な遊びがあるような操作感だが、アルテグラはボタンを押すような感覚で、レバーを操作したと同時にギアはダイレクトに変速している。
リアギアはも同じく、レバー操作に合わせて「ガッ」、「ガッ」、「ガッ」とリズミカルな変速をする。
「ガチャり」が「ガッ」に変化したアルテグラは、「メカニカル」な感じ。子供のおもちゃから、少しギアに変化した感覚である。
デュラエースの変速感覚
そして、最後に最上位グレードDURA-ACE(デュラエース)である。アルテグラからさらに進化した操作感を味わえた。
フロントも、リアも「カッ」とあっという間に変速する。ついに擬音から「濁点」がなくなってしまうほどスムースな操作感である。レバー操作を追いぬいて先に変速したと錯覚するくらいの感覚で、操作と変速のタイミングに誤差がない。
やはり、レースレベルで必要な反応の速さを実現している。デュラエースは「メカ」を超えて、「次世代」のハイエンドな操作性能を感じさせてくれる。
乗り比べてわかったのは、コンポの操作感の違いは素人でも実感できること。そのくらいの違いをグレード別にシマノは作り上げている。上位グレードの上質な機構は、我々にロードバイクに乗る喜びを与えてくれる。
これか!シマノコンポのグレードの違いのまとめ
以上、ロードバイクのコンポのデュラエース、アルテグラ、105の違いについて、スペックや価格、実走した印象から違いをまとめてきた。
コンポーネントのグレードによる性能の差がどこにあるか理解いただけただろうか?
- 軽い
- 効率が良い
- 耐久性が高い(寿命が長い)
- 剛性が高い
- ブレーキ性能が良い
- 変速操作が鋭い
上位グレードほど、上のポイントについて性能がより良くなり、値段が高くなっているわけだ。
それでは、どのコンポを買うのが良いのか?
最初のロードバイクで選ぶべきは、105
初心者は、上位グレードの性能の恩恵を預かれるほど、脚力がない。それほどの高速走行も続かず、長い距離も走らない。そんな中から上位グレードのパーツに埋もれるのは勿体無い。
そこで結論から言えば、最初の1台は「105」を選んでほしい。
初心者は完成車としてセットで購入することが多いので、「105」グレードを選ぶと良い。
105グレードでも十分ママチャリ以上の、クロスバイク以上の上質な自転車であること、全く別の次元の乗り物であることを感じることができる。ロードバイクに乗るだけで楽しい時期が半年以上はつづいてくれる。1年はそのままでもいいだろう。
それからロードバイクに乗り続けているうちに、自分の目指したい方向性も見えて来るだろう。
そこからは、その方向性に合わせてパーツのグレードも上げていけば良いだろう。
ロングライドをのんびり楽しむなら、そのままでもいいし、それなりの距離を速く走りたいなら耐久性もあげてアルテグラにしてもいいい。
ロードレースやヒルクライムレースなど本気度マックスの世界を目指すなら、デュラエースへと進んでいけばいい。
そんな、自分に合わせてパーツを交換していくことがロードバイクのもう一つの楽しみである。だから、最初は105が大正解である。
ロードバイク選びの悩みが少しはシンプルになっただろうか?
まぁお金があったら、全然最初から上位グレードでもありですけど、
アップグレードの楽しみを後々にとっておくのは個人的にはアリアリだと思います。
最後におまけの電動コンポについて
コンポの上位グレードのデュラエースとアルテグラには、電動でギアを変速するDi2というシリーズもあります。ただ、べらぼうに高価になります。
最新のデュラエース電動コンポは、40万円オーバー!完成車のそこそこ良いのが買えちゃう。
DURA-ACE(デュラエース)Di2(wiggle)
wiggle価格:¥454,260
ULTEGRA(アルテグラ) Di2(wiggle)
wiggle価格:¥149,900
試乗したことはないのですが、変速操作だけは体験したことがあります。
これはもう「近未来」の操作感です。他にあんまりない感覚で、レバーを倒すという操作がボタンに変わるので特に前ギアを変える力が必要なくなるのが大きいでしょう。
特に女性はギアの変速操作に余計な力を使わなくて済むのでオススメだ。
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